それから
serial_8
毛布ごと絡まり2人が転がるたびに、肩が床に当たりゴツ、と音を立てる。
何度目かに上になった次元が、侍の口内深くから舌を引き抜いた。
「・・・・・・なあ。」
「・・・・・・ん?」
侍の返事が掠れている。
「・・・・・・全然気づいてなかったのか? ・・・・・・その・・・・・・、俺が・・・・・・、」
「・・・・・・。」
呆けたような侍の目がはっきり焦点を結び、次元を見た。唇が濡れている。
「・・・・・・お主が今日、『行くな』と言うまでは。」
「・・・・・・あれか。」
気まずそうにそっぽを向く顔をぐいと両手で挟み、侍が覗き込む。
「あの言葉の意味を、ずっと考えていた。」
「・・・・・・。」
「自分に都合のよい解釈をしそうになっては、浅ましいことだと、己を戒めておった。」
「・・・・・・五右ェ門・・・・・・、」
嬉しいような苦しいような顔をして、次元が覆いかぶさろうとする。押しとどめて、侍は言った。
「どういう意味だったのか、言え。」
「・・・・・・もういいじゃねえか。」
「よくない。言え。」
「・・・・・・ちっ。」
舌打ちするやいなや、次元はがば、と侍を抱き上げた。頬ずりして、打ち明ける。
「多分・・・・・・、ずっと、こうしてえと思ってた。」
「 !」
硬直する侍をそっと床に下ろして、頬にキスした。毛布が作る闇の中、外に漏れない小さな声で次元は囁く。
「 どこにも行くな。」
「 うむ。」
口付けを一度。ふと身を離して、また一度。
抱き合い肩に鼻をうずめて、しばらく互いの心音を聴いた。このまま死ぬならそれもいいと、次元は思った。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
このまま死ぬのは無理だった。
心音よりも激しく脈打つ場所が、重なりこすれ合っている。意識すまいとすればするほど固く張り詰めるそこに、互
いの拍動がずくんずくんと響いた。たまらず次元が腰をずらすと、侍が「ふ」と息を漏らす。
限界だ。
「・・・・・・抱くぜ、五右ェ門。」
「・・・・・・抱いてよいか、次元。」
同時に放った言葉に、二人は顔を見合わせた。
「・・・・・・お主、心得があるのか。」
「ねえよそんなもん。」
次元が即答する。「拙者もないが」と身を起こしかけた侍が唇を塞がれ、「むぐ」と呻いた。
「何でもいいさ。やってみようぜ。」
返答を待たず次元は侍を床へ押し戻し、衿を開いた。現れた白い胸元に、思わず生唾を飲む。侍が不審気に聞い
た。
「・・・・・・何か変か。」
「・・・・・・まあ、だいぶ罪深いことになってんな。」
なんだそれはと返される前に、首筋に吸い付いた。侍がまた硬直するのが分かる。ひと吸いひと吸い感慨を込め
て、次元は唇を押し当てていった。痕を付けるのが憚られるくらい白い肌なのに、骨はごつくて妙な気分になる。
侍は大人しかった。首元や鎖骨の周りをどんなに吸っても、反応が全くない。
「・・・・・・?」
そっと顔を見遣り、次元は仰天した。
ぎゅうううと目を瞑り息さえも止め、侍は真っ赤になって踏ん張っている。
「・・・・・・おい、そんなに力むな。」
「・・・・・・!」
聞こえているのかいないのか、侍は返事もしない。様子を窺いながら首をちゅっ、とやると、結んだ口がへの字に
なった。
「・・・・・・嫌か? 五右ェ門。」
「・・・・・・分からん!」
吐息と共に吐き出す声が、裏返った。
次元の何かを、確実にヒットした。
着物を袴から全部引き抜き、猛然と侍に襲い掛かる。
「じ、じげん!」
晒け出された胸板にむしゃぶりついた。痕が付こうが付くまいが、もう構わない。舌を当て強く吸い立てるたびに、
侍の背がびくんと床から浮き上がった。必死で堪えている顔をじっと見ながら、つるつるの乳首をぱちゅ、と口に
含む。侍の顎がのけぞり、「あ」という声が確かに漏れた。
「ここいいのか? 五右ェ門・・・・・・、」
「・・・・・・!」
ぶんぶんと首を横に振る侍の口は先刻と違って大きく開き、激しい息を上げている。「そうか」と呟き、次元は口の
中の突起を舌で転がし始めた。
「〜〜〜〜〜!」
次元の肩を掴む指に、ぐっと力が入る。空いている方の乳首も指先で軽くくすぐってやると、喉の奥でくぐもった音
がし始めた。
「声出していいんだぜ。」
「・・・・・・!」
途端にぴたりと止まる呻き声に、次元は苦笑した。素直じゃねえなあ。そういう所がたまんねえってのに。わざと
音を立てて舐め吸ってやると、下腹部あたり、侍の熱いものがぐうっと持ち上がる。そんなにいいくせに、我慢しや
がって。我を忘れて次元は五右ェ門の乳首をなぶり続けた。
突然、侍が起き上がる。
「 次元!」
「・・・・・・!?」
驚くより何よりその姿態に心を奪われ、次元は言葉を失った。着物も髪も乱れに乱れ、頬を上気させた侍の瞳に
は、うっすら涙さえ浮かんでいる。
「・・・・・・お主ばかり、するな。」
尖り切った乳首を隠すようにして前を掻き合わせ、荒い息と共に侍が言う。
「拙者も、する。」
「・・・・・・まあ、いいけどよ。」
答え終わるより先に飛びかかられ、次元は思わず肘をついた。ぐいぐいと引っ張り上げられるのに任せて寝巻の
上を脱ぎ捨てると、侍は次元にのしかかり、すぐさま乳首を舐め始めた。
こいつは・・・・・・、
頭を上げ、次元は食い入るようにそれを見つめた。頬を染め目を伏せる侍の貌は美しいと言ってもいいくらいなの
に、その下でペロペロと舐める舌の動きはたまらなくいやらしい。一心不乱に取り付いていた五右ェ門がふと顔を
上げ、ためらいがちに聞いた。
「・・・・・・よくないか。」
「いや、何て言うか・・・・・・、感動してる。」
「・・・・・・?」
変な顔をしている侍に、次元は笑って言った。
「好きだぜ、五右ェ門。」
「・・・・・・!」
かあああ、と侍が赤くなる。
「お主は・・・・・・、狡いな。」
「そうかもな。」
「・・・・・・。」
何かを刺激したらしい。憤然とした様子で身を起こし、侍は次元のズボンに手を掛けた。
「お、おい、五右ェ門。」
「 尻を上げろ、次元。」
有無を言わさず侍は下着ごとズボンをずり下ろした。びよん、と勢いよく飛び出したものを、二人しばらく黙って見つ
める。これから起こることを想像した途端、次元のそこは色めき立った。早く、早くとせがむように、びくびく振れる。
「 お主にも、よくなってもらわねば、困る。」
自分に言い聞かせるように呟き、五右ェ門は微かに喉を鳴らした。意を決して口を開け、次元を見上げる。
「行くぞ、次元。」
「 好きに、やんな。」
精一杯の虚勢を張り、次元は笑ってみせた。挑発と受け取ったのだろう、五右ェ門の眉がきゅっと吊り上がり、唇
が、亀頭を挟む。
「 !」
いきなりギブアップしたくなった。
挟んだ唇の中で舌がチロチロと先端を舐めたかと思うと、そのまま侍はじゅぽじゅぽと唇を上下させ始めた。ひどく
ぎこちない愛撫なのに、侍の口の中にいるというそのことだけが、次元をたまらなく掻き立てる。
思わず息が上がっていたらしい。侍がちら、と次元を見上げた。自分のものを口に含んだその顔に、股間がまた
悲鳴を上げる。
「よはほうらな、ひへん。」
目をすっと細めて、侍が笑う。「まあ、いいんじゃねえか」とうそぶくと、一瞬睨みつけ、侍はスピードを上げた。
「・・・・・・!」
毛布を握り、次元は耐えた。
何度も何度も駆け上がる絶頂に抗うように、侍の頭を掻き撫でる。天上の喜びと地獄の苦しみの間で、次元はの
たうちまわった。
とうとう、五右ェ門が唇を離した。
「・・・・・・あごが、疲れた。」
ふうう、と息をついて「お主のはでかいな」と呟く。侍の腕を、次元は取った。
「・・・・・・五右ェ門、こっち来い。」
「・・・・・・!」
四つん這いの五右ェ門を引き寄せ、きつく抱いた。まだ濡れている唇を唇で探し、飲み込むようにキスをする。苦
しいのか、「んっ・・・・・・」と侍が声を漏らした。
唇を吸いながら、次元は侍の袴を手で探った。帯はすぐ見つかったが、どうなっているのかよく分からない。まご
ついていると、五右ェ門の手がかかった。
「・・・・・・拙者が。」
唇を離すと俯いて、膝立ちのまま侍は帯を解き始めた。肩に毛布を掛けてやりながら、その美しい所作を見守る。
しゅる、しゅば、という音の後、とうとう袴は侍の手を離れ、地に落ちた。
「・・・・・・。」
着物の間からちらちら覗く白い褌はこれでもかというくらい勃ち上がり、濡れているように見えた。フラフラと伸びる
手を、侍が「待て」と掴む。
「サラシも取るから、待っていろ。」
「・・・・・・。」
待てるかよ。
両手がサラシに掛かるやいなや、次元はパンパンのそこに手をやった。
「・・・・・・ふ!」
「熱いな・・・・・・。」
少し揉んだだけで侍がきゅうう、と身を丸くする。湿った布ごと撫でさすり、隙間からものを引っ張り出そうとした。
「次元!」
一喝され、次元の手が止まる。
「待てぬのなら、やめるぞ。」
「そりゃねえだろ、五右ェ門・・・・・・。」
しょぼくれて見上げる次元の頭を撫で、「よいか、待て」と侍は少し笑った。犬じゃねえぞとぶつくさ言い、次元は床
に胡座をかく。
サラシがするすると解かれてゆくにつれ、引き締まった腰があらわになる。ごくり、と次元は喉を鳴らした。全て落
としてしまい、残った褌に手をかけてから、侍が困ったように「次元」と言う。
「・・・・・・少し離れろ。やりづらくてかなわん。」
「いやだね。」
身を乗り出し、ほとんど鼻がくっつきそうな位置で凝視しながら次元は答えた。今すぐ触りたいのを必死で我慢し
てんだ。1ミリでも後ろに下がるなんて、あり得ねえ。
ため息をついて、侍は褌の端を引き抜いた。くるくると巻き取られる布の下から、微かに侍の匂いがする。待ち切
れず、白い腿に両手を掛けた。
「次元・・・・・・、」
「五右ェ門、早く・・・・・・、」
次第に薄くなってゆく布はもうすっかり濡れていて、侍のそれが透けて見える。ぺと、とくっついている最後の一枚
を侍が取り去った途端、次元はそこをしゃぶった。
「〜〜〜〜〜!」
思わず頭を引きはがそうとする侍の両手を掴み、ひたすら舌と唇で、次元は愛した。なにが「待て」だ、待ち切れ
ないのはお前の方じゃねえか。先走りでぬるぬるのそこを、さっきされたように唇でしごいてやると、侍がたまらな
い声を上げた。手を振りほどき、何とか次元のものに触ろうとする。こんなに感じているくせに、自分だけというの
がどうにも嫌らしい。
「・・・・・・。」
ねろぉ、と舌を五右ェ門から離し、次元は毛布の上に横になった。
「俺の顔またげ、五右ェ門。」
「・・・・・・。」
手招きされ次元の方へ寄ったものの、侍はそのままためらっている。目の前で揺れる袋をちょっとさすってやった。
「やめろ、次元・・・・・・、」
「ほら、こっち・・・・・・、」
こわばる脚を強引に引っ張ると、いきなり侍が身を屈め、次元に口付けした。
「・・・・・・!」
頭を抱えられ吸い尽くされて、次元の動きが止まる。甘い不意打ちからようやく我に返り、侍の背に腕を回そうとし
た瞬間、
「 御免!」
突然侍が後ろを向き、がばあ、と次元を跨いだ。
「 !」
頭をぶん殴られたかと思った。
目の前に広げられた侍の全てが、次元を捕えてもう離さない。腰にかかる着物をたくし上げ、次元はそこに見入っ
た。
引き締まった尻の奥はきれいなものだった。ヒクヒクと蠢くそこを、あろうことかかわいいとさえ次元は思った。
「・・・・・・やべえ。」
入れてえ。
両手で押し広げた。
「じ 、やめ!」
制する声と同時に、穴がきゅううう、とすぼまってゆく。思わず唇ではむ、と挟んだ。
「んーーーーーー!」
目の前のものを咥えようとしていた侍の口が閉じ、声を必死に塞き止める。膝を大きく開いたまま次元の上にどっ
と倒れ込み、侍は尻を左右に振った。逃げているつもりらしいが、当の本人には淫らな誘いにしか映らない。
入れてえ入れてえ今すぐ入れてえとそれだけを念じ、次元はひたすら唇でそこを揉みしだいた。指で広げてぴろ、
と舐めてみる。侍の声が上がった。舌を小刻みに動かして穴の周りをくすぐると、声は次第にか細い喘ぎへ変わっ
てゆく。唇をあて、舌をゆっくり捩じ込んだ。奥まで入ったそれを中でぐにぐにと動かすと、突然侍は暴れだした。
「んん・・・・・・、んふ!・・・・・・っん・・・・・・!」
次元の腿に頬をすり付け、涙声で悶える侍の前から、液が滴り落ちる。
思い出してそこに触れた。筋張ったものはもうびしょ濡れで、バキバキに張り詰めわなないている。優しくしごき始
めると同時に、次元は舌を抜いた。
「五右ェ門、イッていいぞ。」
「い・・・・・・やだ・・・・・・、次元・・・・・・!」
指を奥まで思いきり挿れた。
五右ェ門が高く鳴いた。
ほとばしる熱い液が、次元の手を濡らした。
「・・・・・・。」
最後の一滴までしごき出してやり、それを侍の尻穴に塗った。脱力していた五右ェ門が、びく、と顔を上げる。
「・・・・・・じげ・・・・・・、」
「五右ェ門・・・・・・、入れてえ・・・・・・、」
うわごとのような次元の声に、侍は打たれたように黙った。
「お主は・・・・・・、本当に狡いな。」
「・・・・・・すまねえ。」
ふう、と大きく息をつき、それから侍は尻を上げた。
「 やってみろ。どうなっても知らぬぞ。」
「いいのか。」
「ここまで来て、いいも悪いもあるか。」
「・・・・・・。」
つぷ、と次元が指を入れると、侍が長い息を吐く。押し出そうとする力に逆らい、ゆっくり奥へ挿し入れた。
「五右ェ門・・・・・・、力抜け・・・・・・、」
「や・・・・・・っておる・・・・・・!」
探るように指を進めると、ある一点で侍が「ん」と漏らした。ここか。指一本でそっと撫でた。
「んん!」
侍の前が急に勃ち上がる。握り込み、ゆるゆると慰めながら中を撫でた。動きに合わせて侍の腰が揺れ始める。
吐く息がだんだん荒くなり、最高潮に達した瞬間、次元は不意に指を抜き、二本一気に突っ込んだ。
「 っ!」
次元の脚に唇を押し付け、侍は叫ぶのをこらえている。
挿し入れた二本の指を抜き差しした。奥まで突っ込み、入口を拡げるように指の根本をぐりぐりと回す。中の一番
いい場所を時々こすってやると、痙攣するように穴がひくひくひく、と動いた。エロい。たまらない。
「五右ェ門・・・・・・、いいか・・・・・・?」
指をそっと抜き、上ずる声で次元は聞いた。侍が黙って次元の上から降りる。毛布の上に這い、頭を床につけた。
「 手加減しろ。」
「 自信ねえ。」
侍の腰を抱え、先端を当てた。どんどん溢れ出る先走りを入口に擦り付ける。腰に力を入れ、押し込み始めた。
「・・・・・・あ・・・・・・、あ・・・・・・、」
聞いたこともない声を侍が上げる。中は想像以上に狭かった。腰を回しながら少しずつ少しずつ五右ェ門の中に
分け行ってゆく。徐々に広がり飲み込んでゆく入口が、壮絶にいやらしい。
「五右ェ門・・・・・・、すげえ・・・・・・、」
「言うな・・・・・・!」
とうとう根本まで納めきり、次元ははああああ、と息を吐いた。ひくつく五右ェ門の微妙な動きが、いちいち甘く響
いてどうしようもない。たまらず腰を引いた。あとは勝手に体が動いた。
「・・・・・・んっ! んっ! んっ!」
小刻みに奥を突くたびに上がる声は切なげで、悦いんだか苦しいんだか分からない。前に手をやった。案の定少
し萎えているそれを握り、しごきながら突いてやった。
「・・・・・・ぁあああ・・・・・・、」
とろけそうな声に、次元の何かがキレた。
「いくぞ、」
短く言い、限界ぎりぎりまで引き抜いた。奥まで腰を打ち付けた瞬間、五右ェ門が何か言った。もう聞こえなかっ
た。
獣のように、腰を振った。
侍のものが頼りなく揺れている。突然、中がぎゅうう、と締まった。
凄まじい絶頂感に襲われ、次元は五右ェ門の腹を抱えて倒れ込んだ。
頬を押し当てた背が、温かかった。
→つづく
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