夜明け前 −エピローグ−
serial_9
ぐったりと俯せている五右ェ門の上で、次元は完全に脱力した。腹が上下するのに任せて、しばらく荒い息を吐く。
ふと思い立ち、もぞもぞと侍の股間に手をやった。
「こら、次元・・・・・・、」
「やっぱり・・・・・・、イッてねえか・・・・・・。」
向こうを向かせ、半勃ちのそれをゆっくり撫でた。五右ェ門の肩に顎を付け、ものを撫でながら聞いてやる。
「・・・・・・痛いか。」
「・・・・・・痛くない訳がなかろう。」
「・・・・・・そうだな。」
「・・・・・・。」
侍のものが、少しだけ勃ち上がった。
「 全然よくなかったか。」
「・・・・・・まあ、痛いばかりでもない。」
「ほんとか、」
急に起き上がった次元に、少し慌てたように侍は「おおむね痛いぞ」と付け加える。
「研究しなきゃな。」
なぜか嬉しそうに言い、次元は愛撫の手を早めた。
「じ、げん・・・・・・、」
「ん? イキそうか?」
「ん・・・・・・、」
「いいぜ。」
放つ瞬間の侍の顔を、次元は初めて見た。
気持ちよさそうな顔しやがって。
まだ恍惚としている侍の口を舌でこじ開け、貪ってやった。
離した唇が、もの問いたげに動く。
「・・・・・・お主は、どうなのだ。」
「何が。」
侍の髪を撫でながら、無防備に次元は問い返す。
「・・・・・・少しはよいのか、その・・・・・・、」
拙者で、と、侍が小さく言った。
「・・・・・・!」
がばあ、と抱きすくめられ、驚いた侍がじたばたもがく。
「次元!?」
「俺も信じられねえがな、五右ェ門。」
ところ構わずキスしながら、次元は言った。
「めちゃくちゃいいぜ、お前は。」
「・・・・・・!」
絶句する五右ェ門に、「誰にも言うなよ」と次元が囁く。
「・・・・・・言うか、たわけ。」
幸せな、深いキスをした。
*
夜の向こうが白々と薄れ始めた。
起き上がり、次元は身支度をする。夜明けはまだだが、予感があった。ほどなくして、案の定車の音が聞こえ、短
くクラクションが鳴った。
飛び起きる五右ェ門に「ゆっくり来いよ」と笑いかけ、部屋を後にする。
玄関を出た次元を迎えたのは、身を切るような外気と、たっぷりの湿気と、性悪の相棒だった。
「おはよう次元ちゃん。よく眠れた?」
「てめえ・・・・・・。」
よくもぬけぬけと、と呆れる次元に向かって、ルパンはウインクする。
「礼ならいらないぜ♪」
「馬鹿言え、誰が・・・・・・!」
噛み付く次元を手で制し、「その代わり」とルパンは笑った。
「一発いいか? 次元。」
「・・・・・・。」
不意に次元は黙り込み、それから、けっ、と吐き捨てた。
「・・・・・・好きにしな。」
腕をだらりと下げてみせる。
ボグウッ。
ルパンのボディブローは正確だった。げほげほと咳込み、次元は体をくの字に曲げる。
「・・・・・・お前な、ちったあ手加減しろよ。」
「こ〜のくらい何でもないだろ? あそーだ、五右ェ門ちゃんにも祝福のキッスしてやんなくっちゃ♪」
「殺すぞ。」
「 何をやっているのだ、お主ら。」
遅れて出て来た五右ェ門が、呆れた声を出す。
「なんでもねえ。」
起き上がり、次元は侍とルパンの間に立ちはだかった。当のルパンはゲラゲラ笑っている。
「さ、リベンジ行くぞリベンジ!」
訝しげな五右ェ門の髪をくしゃ、と撫で、ルパンが車に乗り込んだ。次元が助手席、五右ェ門が後部に座る。いつ
もの三人を乗せた車が、派手なエンジン音を上げた。
夜が明ける。車が走り出す。
山の端から一条の光が挿した。
完
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