明光








 天井から水滴が一つ、落ちた。
 白熱灯が煌々と照らす狭い浴室に、ぱしゃ、ぽちゃ、と小さな水音だけが響く。
 濡れた両手でお互いの髪を梳きながら、まるでそこしか見えないみたいに、ただ唇を求め合った。
 しのぶの両手が後藤の首に移り、肩から背中のラインを撫ぜる。張り詰めて固い肌に比べて唇が妙に
柔らかいのを、いつもしのぶは少し意外に思う。もっと確かめたくて腕を伸ばした。

「んへっ、」

 後藤が変な声を上げる。腰の両脇に手を回したまま、しのぶが顔を離した。唇についた液体を舐めとろ
うと顔を寄せる後藤にそっと聞いてみる。

「・・・・・・くすぐったいの?」
「・・・・・・いや?」

 なにくわぬ声が腑に落ちない。腰にあてた指を1mm動かしてみる。後藤の頬がひく、と動くのをしのぶ
の瞳が捉えた。

「うわ! しのぶさ・・・・・・!」

 湯が激しく波立つ。秘密にしていた急所を指先でつつ、と暴かれ、後藤が今までにない反応を見せる。
しのぶの髪をつかんだままびくびくと跳ねる後藤に思いがけず興奮してしまった。

「ここいいの・・・・・・?」

 さっきのお返しのような気分で優しく尋ねてやる。

「・・・・・・ちっとも。」

 笑ってうそぶく顔が紅潮している。しのぶもにっこりと微笑みを返して後藤に後ろを向かせた。後藤がお
となしく従うのをいいことに、湯舟に膝をついて立たせる。

「・・・・・・後藤さん、」
「・・・・・・はい。」
「こんな所にほくろがあったのね。」

 背骨の横のその場所にキスする。

「あそう? 自分じゃ見えないからなあ。」
「私も知らなかったわ。」

 後藤が振り返り、意味ありげに笑う。

「・・・・・・いつも夢中で、そんなとこにまで気が回らなかったもんね?」
「・・・・・・。」

 しのぶは黙って腰骨の上、先程の場所に唇を移した。

「う・・・・・・!」

 声を漏らす後藤にお構いなしに、ちゅ、ちゅ、と音を立てると、おもしろいくらい反応が返る。片手を前に
伸ばし、既にいきり立っているものを確かめてそっと撫でた。

「お・・・・・・、あ・・・・・・!」
「そんな声出すのね・・・・・・。」

 しのぶの声も熱を帯びている。

「後藤さん・・・・・・、気持ちいい・・・・・・?」
「・・・・・・。」
「・・・・・・言って・・・・・・?」

 後藤の声が荒い息の間から漏れた。

「めちゃめちゃいいです・・・・・・!」

 しのぶの内部のどこかがとろり、と溶けた。あちこちに跡のついた腰をさらに吸いながら、熱い愛しいも
のをこすり上げる。もう片方の手でふにふにと柔らかい部分も撫でてみた。

「うお・・・・・・、しのぶさ・・・・・・!」

 手の中のものが急に太くなった。間際に来ているのを感じて、しのぶが思わず腰の横から覗き込む。

「・・・・・・見る?」
「・・・・・・いい・・・・・・?」
「いいよ・・・・・・!」

 言った瞬間、どくんどくんと波打つそこから放たれるさまを、しのぶは不思議な感動をもって眺めた。徐
々に手の中で変化する大事な人の大事な場所を、優しく優しく撫でる。
 男が身を震わせたかと思うと急に振り返った。きつく抱き締められると、少し冷えた体に男の体温が気
持ちよかった。

「・・・・・・どうだった?」
「そうね・・・・・・、」

 深い接吻から一息ついて、しのぶは後藤を見上げた。

「不思議ね、男の人の体って。」
「そう? 分かりやすいじゃない。」
「そこがよ。」
「俺に言わせりゃ・・・・・・、」

 後藤が両手を取った。

「あ!」
「女の体の方がよっぽど不思議だね。」

 しのぶを壁に押し付け、両手を押さえたままでまじまじと眺める。

「・・・・・・なんでこんなにそそるかねえ?」
「見ないで・・・・・・!」

 しのぶの声がかすれている。

「こことか?」

 鎖骨を吸う。

「こことか、」

 へその下の柔らかな起伏にキスする。

「ここなんか、こんなにして・・・・・・、」

 尖った乳首を舌でつん、と突く。「んっ」と声を漏らすしのぶをまた俯瞰した。

「エッチだなあ・・・・・・。」

 感じ入ったようにため息を漏らす。せめて顔を見られまいと必死でうつむくしのぶの赤い頬が、濡れ髪
の間からちらちら見えた。

「離して・・・・・・。」
「ごめん、もうちょっと見せて。」
「いやあ・・・・・・!」

 身をよじらせるしのぶの姿態に、後藤の内部がいやがおうにも高まる。これじゃどちらが耐えているの
か分からない。

「後藤さん、お願い・・・・・・、」
「・・・・・・どうして欲しい・・・・・・?」
「離して・・・・・・、」
「離して・・・・・・?」
「・・・・・・。」
「それから・・・・・・?」

 少し離れて、しのぶの唇が開くのを待った。しのぶが目を閉じる。
 赤い唇が「して・・・・・・」という形をとってから、囁きが耳に届いた。

 後藤の中で何かが弾けた。こうさん。

「ああっあっ・・・・・・!」

 手をのばし、シャワーの栓をひねった。頭から湯をかぶりながら、愛しい女が感じる場所を感じるように
舌で愛した。

 体が温まり始めて、そういえばここ風呂だった、と気づいた。






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