迸出
抵抗するしのぶを浴槽の淵に座らせた。温かいシャワーをあててやり、自分は湯の中にしゃがみ込む。
目の前の赤い膝に2度キスすると、察したしのぶが身を固くするのが分かった。
構わず膝に両手を添え、ぐい、と開く。
「いや・・・・・・!」
「だって、して、って。」
「ちが・・・・・・!」
必死で頭を押しとどめようとするしのぶの腰に手を回した。無言でせめぎ合い、ぐ、ぐ、と距離を縮めて
いく。ちょうど力が拮抗した鼻先で、後藤はわざと視線を上げてみた。
震える細腕の向こうに刺すようなしのぶの視線があった。湯気の中で頬を上気させ、唇をきつく結んで
後藤を見つめている。激しく憎んでいる。そして待ち焦がれている。
こんなエロチックなものを後藤は見たことがなかった。
「たのむよ・・・・・・、」
たまらず内腿にキスする。しのぶがぎゅっと目をつぶった。魔法が解けるように、頭を押さえる腕から力
がすっと抜けた。
歓喜の息を漏らして狂おしくその場所に鼻をうずめる。しのぶの喉の奥できゅうう、と音がした。熱い突
起を唇で探り当てると腰がびくん、と反応する。
「いや・・・・・・!」
何がいやなのか、後藤にはよく分かっていた。唇で挟んで先端を舌でこね回す。魚のように跳ねるしの
ぶをありったけの力で抱きしめた。
「いやあ・・・・・・!」
もっといやがっていい。そしてなにがいやなのか気づいて欲しい。後藤はやめなかった。強く吸い、音を
立てて舌を躍らせた。
分かってるんでしょうしのぶさん。本当は。
「あ・・・・・・! んああ・・・・・・、は・・・・・・っ、は・・・・・・っ・・・・・・、」
いつもと全然違う声が漏れ始めた。後藤の頭をかき抱き、しのぶははっきりと腰を快楽に波打たせてい
た。そんな自分をまだ認められないのだろう、眉が苦悶にゆがんでいる。後藤には分かっていた。しのぶ
が「いや」なのは自分自身だ。
でも、言って欲しい、しのぶさん。
もはや祈るような気持ちで後藤は愛し続けた。舌先で先端を細かくくすぐると、しのぶの動きが止まった。
中で何かがせり上がっているのが分かる。ぐっと腰を前に出したしのぶがとうとうそれを認めた。
声が漏れた。
「・・・・・・ い い ・・・・・・っ、」
こんなに嬉しいと思わなかった。
しのぶの両脚を持ち上げ、自分の肩に乗せた。途端にきつく締まる腿に、彼女がもうすぐそこにたどり
着くことを知る。
「いくの、しのぶさん?」
「・・・・・・!」
「お願い、言って・・・・・・。」
「・・・・・・ごと・・・・・・さ・・・・・・、」
「お願い・・・・・・、」
しのぶの瞳から涙がこぼれた。
「いく 、 ぅ・・・・・・、」
息が止まる。一瞬どこかへ行ってしまう気がして、後藤は思わずしのぶの名を叫んだ。
シャワーの音だけが響いた。
頭に絡ませた脚の力がふいに抜けた。しのぶが大きく息をついて崩れ落ちる。しっかり抱きとめて、一
緒に湯に沈み込んだ。
湯舟にまだ残る大きな波が、2人をゆっくりと揺らす。
互いの肩に顎を乗せて、耳の後ろで荒く長い息を聞いた。体をすべてゆだねて肩を上下させるしのぶ
の手を、後藤が湯の中で握る。
「・・・・・・愛してる。」
体を離してしのぶの顔を覗きこんだ。まだ涙の残る目元を舌で拭って、もう一度愛してると呟いた。しの
ぶが、ん、とかすれ声を出す。
「初めて言ったね、しのぶさん。」
「・・・・・・?」
「いいって。」
「・・・・・・。」
「悪くないでしょ? 言ってみるのも。」
「・・・・・・二度と言わないわ。」
「あ、そういうこと言うと俺燃えちゃうよ?」
しのぶがしまったという顔で後藤を見た。
後藤が笑ってしのぶを抱きしめる。
「ね、いい時は言ってね?」
「・・・・・・いい時はね。」
こりゃあまた我慢するな。
後藤は頬を緩ませた。
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