トリガー(2)
漢侍受祭 お題「恋」
どこが髭だか唇だか分からない。闇雲に探る五右ェ門の唇を、男の厚い舌がこじ開けた。どこもかしこ
も煙草の匂いがする。蹂躙される口の端から、唾液が流れ落ちた。
荒い息の下、次元が呻くように呟く。
「どうすりゃいいんだ・・・・・。」
「分からん」と答えたら、再び唇を貪られた。男の手が乱暴に五右ェ門の体をまさぐり始める。触れられ
ていちいちびくん、びくん、と跳ねるのが、自分の体だと信じられなかった。
「・・・・・くふっ!・・・・・」
突然股間に手を這わされ、声が漏れた。次元がゆっくりそれを撫でる。
「パンパンじゃねえか。」
「・・・・・言うな・・・・・っ!」
「恥ずかしがるこたぁねえ。俺のだってこんなだ。」
ぐい、と手を引かれ、そこにあてがわされた。
なんだこれは。
自分の知るそれとは違う凄まじいものが、暴れて脈打っていた。途方にくれる五右ェ門の顔を覗き込み、
熱っぽい目で男が促す。少し撫でた。次元が荒い声を上げた。ものも言わず引っ張られ、ソファに押し
倒された。
寝巻の裾を乱暴に捲り上げた次元が、はっと息を飲む。不審に思い、五右ェ門は顔を上げた。
「・・・・・何だ・・・・・?」
「・・・・・いや・・・・・、何でもねぇ・・・・・、」
痛いほど勃起したその部分を、次元は食い入るように見つめている。耐え切れず起き上がろうとした瞬
間、両脚をがば、と広げられた。
「!?」
「すげえな・・・・・、褌ってのは・・・・・、」
目の色が変わっている。息が荒い。
次の瞬間、五右ェ門はほとんど悲鳴に近い声を上げた。次元の鼻が、口が、熱いそれを布ごと揉み挟
み、もごもごと屠る。
「・・・・・や・・・・・めろ・・・・・っ!」
「無茶言うな。もう止まるかよ。」
仰向けのまま両脚を思い切り引き上げられ、膝を次元の両肩に預ける恰好になった。次元の舌が布
の中に入ってくる。ぴちゃぴちゃとした感覚に、浮いて不安定な腰がよじれ、波打った。
「あ!・・・・・はぁっ!・・・・・っくっ!」
「暴れるな、危ねえだろうが。」
無茶を言っているのはお主だ、という声がもう出ない。涙が流れた。もがく手で次元を探した。
「!」
熱いものを探り当てた瞬間、次元がやっと口を離した。熱に浮かされたような目が五右ェ門を見る。
「拙者にも・・・・・させろ・・・・・!」
息も絶え絶えに請う五右ェ門に、次元は優しい笑みを返した。
「・・・・・まだだ。」
腰が浮いたままの五右ェ門の胸元に、両手を伸ばす。
「・・・・・もう少し、見てえ。」
優しい顔が悪魔に見える。前をはだけさせた両の手が、乳首をくりくりといじり始めた。そんなものがこ
たえるか、という意に反して、変な声が出る。なぜだか分からない。多分、この男だからだ。
「・・・・・気持ちいいのか・・・・・?」
「ちが・・・・・!うぅ・・・・・、っん・・・・・!」
素直だな、と囁いた口が、再び褌にかぶり付いた。布を噛んでぐいと引っ張り、五右ェ門が剥き出しに
される。既に尖り切った乳首の先端をつまみながら、次元が、あの唇で、五右ェ門を上から下までしゃぶ
り上げている。
「・・・・・ぁああ・・・・・っあ!・・・・・あああ!」
誰の声だこれは。自分の声では断じてない。頬張りながら「そんな声で哭くのか」と呟く次元を、違うと
言って蹴り飛ばそうと、五右ェ門はもがいた。
突然、脚を降ろされた。ようやく腰が地についたが、甘いだるさに体がわなないて起き上がれない。はぁ
はぁと肩で息をしながらベルトを外して立ち上がる次元を、ぼんやりと眺めた。
「くそ・・・・・、我慢できねえ・・・・・!」
次元が下着ごと勢いよくスラックスを降ろした瞬間、ガン、と頭を殴られたように五右ェ門は意識を取り
戻した。ほとんど恐怖の面持ちでそれを見つめる侍の顎を、次元が軽く持ち上げる。
「・・・・・頼む・・・・・、」
びくびく脈打つそこへいざなわれて顔を上げると、切なげに見下ろす次元と目が合った。口を開け、近
づける。次元が身じろぎもせず見つめている。
「・・・・・ぅお・・・・・!」
含んだ瞬間に次元が上げた声が、どんな愛撫よりも五右ェ門を歓ばせた。先端を激しく舐め、全体を
口の奥へ。さっき次元にされたようにしようとして、喉の奥につかえさせ、むせた。
「無茶すんな。初めてだろうが。」
次元が引き抜き、自らソファに横たわる。導かれ、男の顔をまたぐようにして膝をついた。何がしたいの
かは、なんとなく分かる。目の前でいきり立つものをとりあえず撫でた。次元がまたあの声を上げる。
「・・・・・早く・・・・・っ、頼む・・・・・!」
何も考えずにしゃぶりついた途端、五右ェ門自身も温かいものに飲み込まれた。次元が五右ェ門を咥
えたまま、腰を掴んで上下するよう促す。ためらいながら腰を振ると、動きに合わせて次元が深く飲み込
んだ。
「ん、ふ・・・・・・!」
熱い。次元のものにうまく集中できない。突然、快感が駆け上がった。
「・・・・・っん!んんんっ!」
歓喜の声はくぐもり、口の中の次元に当たって響いた。ほとばしるものを残らず吸い出すように、次元
が口内を締める。五右ェ門の腰が一瞬激しく動いて、それから止まった。
最後の一滴まで吸い尽くしたものを、次元がちゅぽん、と離す。真っ白の頭に「よくがんばったな」という
声が聞こえた。何だか分からないが屈辱的だ。まだビン、と立ったままの次元に、再び手を伸ばす。
「いいから、じっとしてろ。」
「しかしお主は・・・・・、あぁっ!?」
声が裏返った。
むんずと割り広げられた尻の奥で、ぬめったものが躍っている。今度こそ本気で逃げようと暴れる五
右ェ門の腰をがっちり抑え、次元が容赦なく穴を舐め回した。
「離せ・・・・・っ!やめ・・・・・!」
「離すかよ。さっきから丸見えで、たまらねえんだ。」
ぞわぞわと肌が粟立つような、そこだけ宙に浮くような、全く初めて知る感覚だった。それが気持ちいい
とは絶対に認めたくないのに、萎えていたものが再び屹立し始める。
ぴちゃぴちゃぺろぺろという派手な音を聞きながら、この先に待つ瞬間のことを思った。次元は間違い
なくそのつもりだ。耐えられるか。
指が入ってきた。ぐうっ、と押し込まれる感覚を、五右ェ門ははっきり不快と捉えた。そういう声が出た。
「・・・・・辛いか。」
次元が指を抜き、身を起こす。
「・・・・・大したことはない。」
うそぶく五右ェ門の頬に、次元は音を立てて接吻した。「待ってろ」と言い残し部屋を出る。ほどなく戻っ
てきた手には、銃の手入れに使うオイルが握られていた。
「・・・・・大丈夫なのか、それは。」
「ないよりマシだろ、ほら。」
不審気な五右ェ門を促しながら、次元が掌にたっぷりそれを垂らす。ソファに手を付いて尻を突き出す
と、ゴクリと喉の鳴る音が聞こえた。前触れもなく押し広げられ、全体を手の平がヌルヌルと撫でる。クッ
ションに顔を突っ込み、五右ェ門は吠えた。
ゆっくりと指が入ってくる。もう一方の手が前を握り、やはりオイルでヌルヌルにする。浅く、深く、しごく
手の動きに合わせて、穴の中を指が出入りし始めた。
「・・・・・どうだ?・・・・・少しはイイか・・・・・?」
窺うように、次元が背中に舌を這わす。時々太腿にあたるものが、熱した鉄のように熱い。
「・・・・・言わ・・・・・せるな・・・・・っ!」
声がうわずるのが嫌だった。もう1本入ってくる。はっ、はっ、はっ、と浅い息が漏れた。前をこする手の
動きがやけに緩慢で、無意識に腰が動いた。待ち兼ねたように中の2本が激しさを増す。
「んう・・・・・!」
突き上げるこの感じは、もう快感以外の何物でもなかった。達する寸前で、全ての動きがぴたりと止ま
り、ゆっくり指が引き抜かれる。次元が尻の平に両手を置いた。熱い、濡れたものが、ぐむ、と押し付けら
れる。
「・・・・・いいか・・・・・・?」
少し笑った。
何を言っているのだ。もう暴発寸前のくせして。
愛しいと思った。
次元の手に自分の手を重ね、割り広げて見せた。
「・・・・・好きにしろ。」
次元が神様、と呟く。
「助けてくれ・・・・・!」
こっちの台詞だ、と呻いた瞬間、衝撃が背骨に来た。
「う・・・・・おおおお・・・・・!」
咆哮が耳を満たす。痛みも衝撃も、次元が上げる快楽の声に押し流された。腰を高く掲げ、愛しい男
の打ち込む楔をただひたすら受け止める。一番奥まで入ったものをぐりぐり押し付けられると、忘れてい
た快感が蘇ってきた。
「・・・・・五右ェ門・・・・・っ!」
覆いかぶさるようにして、次元が肩の辺りに唇を押し付ける。腰を大きくグラインドさせながら、片方の
手が五右ェ門の拳を、もう片方が熱いものを握る。「好きだ」と囁かれた瞬間、五右ェ門の中で何かがき
ゅうっと収縮し、それから弾けた。
「あああああ・・・・・っ!」
次元の声が、遠くから聞こえてくる。
*
ちゅ、ちゅ、ちゅ、という音に目を覚ますと、目の前に髭があった。ソファに横たわる五右ェ門の頭を撫で
ながら、床に座った次元が「よう」と目を細める。考えるより先に、唇を求めた。
「・・・・・どうするよ。」
糸を引く唇を舐めながら、次元が呟く。
「なるようにしかなるまい。」
「あいつにだけはバレねえようにしねえとな・・・・・。」
それは難しかろうと五右ェ門は思った。あんなにカンのいい生き物は他にいない。
「それで、どうだ。こっちは。」
次元が五右ェ門の尻をぺち、と叩く。
「うむ。ひどいものだ。」
「・・・・・やっぱ痛かったか。」
「痛いなんてものではない。お主も覚悟しておけ。」
なに、と次元が目を剥く。
「冗談じゃねえ、俺はゴメンだぜ!」
「ならば拙者も、金輪際ごめんこうむる。」
起き上がると、「待て、」と慌てて次元も立ち上がった。
「今日はほら、2人とも初めてだったじゃねえか。次は痛くないようにするからよ。」
「だから、一度味わった方が加減の仕方も分かるではないか。」
「いいか五右ェ門、人には向き不向きってもんがあるんだ。俺のは多分そういう風にできてねえ。だから
やっぱりお前が・・・・・、」
うるさいので、唇を塞いでやった。
目を白黒させている男の口の端を舐めてから、床の寝巻を拾う。
「寝るぞ。疲れた。」
「・・・・・・一緒に寝ようぜ。」
「・・・・・・。」
睨めつけると、男は嬉しそうにすり寄ってきた。
「心配しなくても、もう何もしねえよ。」
寝巻を引き取り、五右ェ門の肩に掛ける。
「・・・・・あてになるか。」
袖を通した途端、後ろから掻き抱かれた。
「・・・・・・!」
「・・・・・・約束する。」
口にした言葉はもう裏切られ、宙に消えた。
記念すべき(?)祭投稿1作目です。
これを書くのに1ヶ月かかったので、祭が終わるまであと3ヶ月半、3本も書けたら御の字か、と思って
ました、まだこの時は(^−^)
この作品には、「Secret Place」の紫あざみさんが挿絵を描いてくださいました!
紫あざみさん、ありがとうございます! 鼻血が出ます!
紫あざみさんの挿絵はこちら(もちろんエロ注意★です)! → 「トリガー」
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