情事
serial_10







鬱蒼とした木々のアーチがふいに途切れ、燃えるような朱の空が目の前に広がった。
照らされて影を伸ばす眼下の町が、山ごもり前とはまるで別世界のようだ。迫り来る太陽のためでは
なく、眺める自分の心境が変わったせいだと、次元にはよく分かっていた。ルパンの鼻歌さえ耳に心
地よく響くのだから、よほど浮かれている。
バックミラーの中、眩しさに細められた侍のまなじりも、心なしか柔らいで見えた。




「いやー、す〜っきりしたね!」

一番ご機嫌なのはもちろんルパンだ。リベンジの大成功を祝して、高々とワインが掲げられる。「ん
じゃま、カンパイ!」といういつもの発声に思い思いの杯が交わされ、ささやかな打ち上げが始まっ
た。

「・・・・・・そういやルパン、お前ご執心のかわいこちゃんはどうした。」

腹が満たされた頃、次元は浮かんだ問いをそのまま口にした。ルパンが急に何かを喉に詰まらせ、胸
をどんどんと叩く。

「どうやら、庭番と恋仲だったらしい。」

ソファに胡座を掻いた侍が、漬物に手を伸ばしながらサラリと言った。

「だーっはっは! そりゃいいや!」
「・・・・・・っるせってんだ次元!」

一息にワインを飲み干し、ルパンが食ってかかる。

「お前は見てねえだろ、彼女を恋人に引き渡す時のオレのかっこよさときたら・・・・・・!」
「だいぶ肩が落ちておったぞ。」
「ぎゃーははは!」

涙を流して笑い転げる次元に、侍も堪え切れず横を向いて笑い出す。

「・・・・・・むおおあぁったまきた!」

ワナワナと震えていたルパンが、とうとうテーブルに飛び上がった。

「おまえらなぁ! よくも人の傷口を・・・・・・!」

♪ Le ciel bleu sur nous peut s'effrondrer・・・・・・

怒声は突然止まった。

「ふ〜じこちゃん!」

突然鳴り響いた「愛の賛歌」に、目にも止まらぬ勢いでルパンが携帯電話を取り出す。やれやれと息
をつき、次元と五右ェ門はそれぞれ自分の酒を注ぎ足した。

「・・・・・・そうなのそうなのバ〜ッチリ終わったところよ。え今から? いーくいくいく、も不二子ち
ゃんいないとさ〜びしくて淋しくて!」

よく言うぜ、という次元のジェスチャーに、べーと舌を出しルパンが手を振る。賑やかなその声は部
屋の外に消え、間もなくけたたましい車の音へと変わった。

「・・・・・・まったく、うるせえ野郎だ。」

鼻を鳴らし、グラスをテーブルに戻す。五右ェ門がこほん、と咳ばらいをした。

「・・・・・・。」

急に部屋の中が静かになった。
時計の音がやけに響く。向かいの侍をちらりと見やり、次元は「なあ」と声をかけた。

「そっち、行っていいか。」
「・・・・・・。」

返事をせずに、侍は顔を伏せた。黙ってもぞもぞとソファの端に寄る。
さりげなく、何食わぬ顔で、隣に座った。
手を伸ばしたグラスがカラン、と音を立てる。チビチビとやる二人を沈黙がおし包んだ。

「・・・・・・、」

次元が、バーボンを一気に煽った。
タン、とグラスを置いたまま、手を離さずにそれを睨めつけている。盃を口に運びながら、五右ェ門
はその背中をそっと盗み見た。

「・・・・・・早く飲めよ。」

次元がボソリと言う。

「・・・・・・なぜ。」

五右ェ門もボソリと返した。

「してえんだよ。」
「・・・・・・!」

突然抱きつかれ、侍の手にした盃から派手に酒がこぼれた。次元が「あ〜あ」と言って盃ごと濡れた
手を取る。

「早く飲まねえから。」
「何を、お主が・・・・・・、」

手をぺろんと舐められ、侍は口をつぐんだ。

「あめーな。」

顔をしかめ、次元が残りの酒をちゅっと吸う。盃を取り上げテーブルへ置くと、濡れた指を一本一本
舐め始めた。肘の方まで垂れた雫を舐め上げ、「きれいになったろ」と笑う。

「・・・・・・。」

きれいになった白い手が、ふいに動いた。男の髪を掻き上げ、引き寄せる。導かれた唇に、次元はそ
っと口付けた。

「・・・・・・あめーな。」

目を瞑ったまま、侍が笑う。その髪を撫で、「三日ぶりだな」と囁いた。

「三日?」

侍が驚いたように目を開ける。

「どうした。」
「いや・・・・・・、何でもない。そうか、まだ・・・・・・、」
「お前、」

思いきりニヤけてしまったらしい。侍が不審気に「なんだ」と問う。

「いや、分かるぜ。俺もだ。」
「何が。」
「もう一年くらいお預け喰らった気分、ってこったろ。」
「・・・・・・!」

かぁっと赤くなる侍の頬にキスして、手を取った。導き、次元のものに当てがわせてやると、一瞬た
めらい顔を上げる。

「・・・・・・撫でて、くれ。」
「・・・・・・。」

まだ赤い顔を俯かせ、五右ェ門はそこを撫で始めた。伏せた視線が、早くも勃ち上がってきた次元の
ものに熱く注がれている。

      たまんねえ。

俺の部屋行こうぜ、と囁いた。睫毛がひらりと上向き、また伏せて、「うむ」と頷く。




廊下の途中で侍を引き寄せた。
高ぶるままに唇を貪ると、壁に背を押し付けられた侍が、「次元」と抗い身をよじる。

「部屋へ・・・・・・、」
「なんだ、待ち切れねえのか?」

ほんの軽口のつもりだった。
だから、悔しそうにそっぽを向いた侍が、次に放った言葉が信じられなかった。

「そうだ。」

      この野郎      

手を掴み、かっ攫うようにして部屋へ引き込んだ。
入るなりスイッチをつける。瞬く光の下、ベッドに押し倒した。

「・・・・・・点けずとも・・・・・・、」

目をしばたかせて侍が言う。「前に言ったろ」と囁いた。

「ちゃんと研究しなきゃなって。」
「・・・・・・本気か。」
「ああ大真面目だ。」

首筋にキスしながら、侍をひと撫でした。驚いて思わず身を離す。

「・・・・・・すげえなお前。もうこんな・・・・・・、」
「言うな。」

次元の襟首をぐいと掴み、侍が唇に食らいついてきた。狂おしく絡まる舌を受け止めながら、袴の帯に
手を掛ける。この前と同じく帯を解くのにもたついていると、見兼ねたのだろう、侍が手を伸ばしてき
た。

「いい、今日は俺がやる。」

押し止めると、侍は笑って「がんばれ」と言った。舌打ちして、下の方へ顔を移す。目の前の屹立に、
袴の上からキスしてやった。

     !」
「なんだ動くな、ほどけねえだろ。」

すっとぼけて言い、再び帯に取り掛かる。見ながら解くのは大分楽だった。「できたぜ」と言い、ま
た布越しに唇を付けて、ぱふー、と息を送ってやる。

「んん!」

侍が身をよじらせるのに紛れて、袴をずり下ろした。
現れた褌がパンパンに張っている。もう濡れている。
思わずごくりと喉を鳴らした。
サラシに手を掛けた途端、侍に掴まれた。

「待て次元、後は自分でやる。」
「ダメだ。今日は全部俺が脱がせる。」

即答してサラシを引くと、むく、と五右ェ門は起き上がった。黙って次元の帽子を外し、ネクタイをほ
どき始める。

「お前も脱がせてくれんのか。」
「・・・・・・。」

唇を寄せると、侍の方から吸い付いてきた。ちゅ、ちゅ、とせわしない口付けの下方、二人の手も忙
しく動く。思いのほか長いサラシをようやく取り去り、褌に手をかけた。少しまさぐると、シャツの
ボタンを外していた五右ェ門が唇を離し、「次元」と上ずった声を出す。

「卑怯だぞ・・・・・・! 妙なところを触るな・・・・・・!」
「端っこ探してんだよ。確かこの辺に・・・・・・、」
「違う、ここだ・・・・・・!」

褌の端を自ら引っ張り出し、次元に渡そうとして、侍はためらった。「ありがとよ」とキスしてそれ
を引き取る。眺めてふと考えた。

「・・・・・・これ、ぐいっと引っ張ったら『あーれー』みたいになんのか。」
「返せ。」
「しねえよ。安心しな。」

笑って、くるくると褌を巻き取り始めた。安心した様子の侍の股間にこちょ、と触れると、逃れるよ
うに腰が揺らめく。つい楽しくなって、一周するたびにこちょ、を繰り返した。

      次元!」

とうとうすごい形相で睨まれた。脱がせかけたシャツを放り出し、突然侍がむんずと次元を握り込む。

「う・・・・・・!」
「仕返しだ。」

激しくこすりながら、片手でベルトを外す。次元をチラリと見上げ、侍はほくそ笑んだ。

「どうした、手が止まっておるぞ。」
「・・・・・・くそ!」

そういうことなら遠慮しねえぜ。
軽く悪戯するだけだったそこを鷲掴みにした途端、五右ェ門が息を飲んだ。撫でくり回しながら白い
布を乱暴に剥ぎ取ってゆく。次元のジッパーを下ろす侍の息が、あからさまに荒くなった。スラック
スが落ち、次いでパンツがずり下げられる。膝にわだかまったそれらを全て脱ぎ去る頃には、侍の褌
もハラリと落ちていた。
肩に引っ掛かっている衣服ををもどかしく脱ぎ捨て、余裕なく抱き合う。互いの腰が勝手に動いて、
熱い部分を押し付け合った。まだ全然足りない。

「・・・・・・しゃぶり合おうぜ。」
「・・・・・・。」

侍が、黙って体を横たえる。
仰向けの体を横向きにさせると、次元の先端を、ぺろ、と濡れた舌が掠めた。目の前のものを、同じ
ように舐めてやる。

ふーーっ!

激しい息が自分に当たった。目の前で、透明な液が盛り上がり始める。舌で掬いながら先端の穴をく
すぐってやると、後から後から先走りが溢れ始めた。

      そんなにいいのかお前、先っぽが。」

返答の代わりに、はあっ、はあっ、という吐息が響く。「お主は・・・・・・、よくないのか・・・・・・」と、
弱々しい声がした。

「お前ほどじゃないかもな、ここは。」
「・・・・・・。」

いきなり侍の唇が竿に移った。上から下まで、勢いよく滑らせ始める。

「ご、ごえも・・・・・・!」
「ほほは、いいは?」
「う・・・・・・!」

唇の動きが早まった。こらえ切れず次元が声を漏らすたびに、侍のものがびくんびくん、と揺れる。
快感を散らそうとして同じ場所を攻めてやるが、どうやら侍は竿の方が耐えられるらしい。必死で射
精感を抑えながらも、人によって違うものだなと次元は妙に感心した。

じゃあ、こっちはどうだ?

重力に従い揺れている袋を、ぺろんと舐めてみた。

「んふっ!」

侍が急に唇を離す。

      敏感だな。」

ぺろん、ぺろんと右に左に舐め回すと、侍は頭に手をかけ本気で抵抗し始めた。

「じ、じげん・・・・・・、やめ・・・・・・!」
「いいんだろ?」
「ちが・・・・・・、こそば・・・・・・!」

そうなのか?
悪戯心がむくむくと湧いてきた。
わざとくすぐるように舐め散らかすと、震えていた脚が無理矢理閉じられてしまった。ちぇ、と思っ
た瞬間、

「!!」

突然、自分の玉から凄まじい快感が駆け上がり、次元は思わずのけぞった。侍の舌が、唇が、次元の
玉を容赦なく屠っている。

「ご・・・・・・、ちょ・・・・・・、ま・・・・・・!」
「どうだ、こそばゆかろう。」

愉快そうに言い、侍は次元の脚をがっしり抱え直した。くすぐったがっていると思っているのだ。勢
いづいてしゃぶる侍の舌づかいに、息が荒がるのをどうにもできない。

「次元・・・・・・?」

五右ェ門が、唇を離した。

「ひょっとしてお主は・・・・・・、ここが良いのか?」
      馬鹿言え、さっぱりだ。」

我ながら情けないくらいの涙声が出た。
五右ェ門の目の色が変わった。

      助けてくれ!

温かな口の中で揉みくちゃにされる玉が、きゅんきゅん疼いて狂いそうだ。もう片方の袋を柔らかく
揉みながら、空いた手でとうとう侍は次元をしごき始めた。欲情して潤んだ侍の眼が、次元のプライ
ドも何もかも押し流してしまう。完全に身を委ね、ただ快楽になぶられて次元は荒い息を吐き続けた。
でかいのが来た。侍の名を呼んだ。温かく濡れたものが次元全部を包み、吸い上げた。




ぶっ飛んだ意識が戻って来るのにどのくらいかかったのか分からない。顔を上げると、五右ェ門と目
が合った。口をつぐんで変な顔をしている。どうやらたいした時間ではなかったようだ。

「・・・・・・いいぜ、出して。」
「・・・・・・。」

ごくん、と侍の喉が動く。ますます変な顔になった。

「飲んだのか。」
「・・・・・・なんだ、この味は。」
「・・・・・・!」

飛び付き押し倒して顔を寄せた。なぜか嫌がり五右ェ門は横を向く。

「こっち向けよ、五右ェ門。」
「嫌でないのか、お主の・・・・・・、」

ごちゃごちゃ言う唇を塞いでやった。

「ん・・・・・・、」

あっさりと侍の体がほどけてしまうのが分かる。「ありがとな」と囁き、きつく抱き締めた。次元の
背をふわふわと撫でる手が心地よい。形のよい唇を味わい尽くしてから、少しとがった顎、白い首筋
へと徐々に唇を移していった。乳首は軽く甘噛みするだけ。切なそうに見下ろす視線の訴えに意地悪
な笑みを返し、臍に口付けた。今にも爆発しそうに反り返っているものを横目で見ながらわざと舌を
素通りさせ、たどり着いた股の付け根を強く吸った。

「・・・・・・っふ・・・・・・!」

たまらず上げる声が、もう発情しきっている。
また唇にキスしに行きたくなる衝動をこらえ、次元は脇の引き出しを開けた。昼間こっそり入手して
おいたボトルを取り出す。

「・・・・・・?」

訝しげな侍によく見えるよう、高い位置から透明の液を垂らした。手の中で馴らされ糸を引くそれを
見ても、侍には何だか分からないらしい。

      何だ、それは。」
「研究にはあった方がいいと思ってな。」
「・・・・・・?」

危機を察した侍が身を起こすより早く、勃起したそこに液をなすり付けた。

      !」

侍の熱であっという間に温まった液を、手のひらで伸ばしてやる。跳ね起きようとした力を急に失い、
侍はくぐもった声を上げた。

「分かったか? こういうもんだ。害はねえ。」

なだめるように優しく撫でているのに、侍が息づき漲ってゆくのが分かる。ぴちゃ、ぱちゅ、という
微かな水音を聞きながら、濡れた内股にキスして囁いた。

      五右ェ門、四つん這いになってくれ。」
     !」

はっと侍が顔を上げる。どういう意味か分かったらしい。「いいか」と言い聞かせた。

「誓ってもいい。今日はお前の気持ちいいことしかしねえ。よくなかったらすぐに言え。」
      研究、か。」
「そうだ。お前が歓ぶことが全部知りてえ。」
「・・・・・・。」

息をつき、五右ェ門は起き上がった。

「歓ぶかどうか、分からんぞ。」
「がんばってみるさ。」
「・・・・・・。」

それ以上何も言わず、侍はうつぶせになった。膝を開いて立て、尻を高く上げる。腹を括ったことを
示す大胆な恰好に、それだけで鼻血が出そうになった。ローションまみれの手で無意識に尻を撫で回
すと、侍が熱い息を吐く。

「・・・・・・。」

まる見えの穴がひくひく動いている。双丘を圧し広げ、少し口を開いたそこを軽く舐めた。

「・・・・・・ぁ・・・・・・、」
「これは? 嫌じゃねえか?」

舐め回す舌の動きに合わせて、はふ、ふぅ、と侍が息を漏らす。「・・・・・・嫌では・・・・・・、ない
・・・・・・」という言葉に体が熱くなる。舌を尖らせ、うごめかしながら徐々に押し開いていった。

「んっ・・・・・・、」
「苦しいか?」
「だい、じょ・・・・・・、」

律義に答えようとするその掠れ声が、どうしようもなく色っぽい。痛いほど張り詰めている自分自身
に我慢だ我慢、と言い聞かせ、次元は舌をゆっくり抜いた。もっと奥まで挿れてやりたい。
ローションの蓋を開けた。白い尻に直接垂らした途端、侍がびくう、と跳ねる。

「悪い、冷たかったか?」

自分の手にもたっぷり取り、液体に埋もれそうになっている穴に、人差し指をぴちゅ、と挿し入れた。

「う・・・・・・、ん・・・・・・、」
「五右ェ門、息吐け。」
「・・・・・・。」

はああああ、と吐く息に合わせて、第一関節あたりまで入れてやる。くに、くに、とゆっくり動かし
た。

「痛かったら言えよ。」
「・・・・・・たくは、ない・・・・・・。」
「どんな感じだ?」
「・・・・・・みょう、な・・・・・・、」

とろけたような声が聞きたくて、質問を重ねてしまう。少しずつ少しずつ挿入を深め、次元はその場
所を探した。この前侍がよがった所が、また分かるだろうか。

「ん!」

突然、侍が跳ねた。

      見つけた。

少し膨れたようなそこを、指の腹で撫でてみる。

「じ、次元・・・・・・、そこは・・・・・・、」
「いいか?」
「いや、なにか、変な・・・・・・、」
「目ぇ瞑れ、五右ェ門。」
「う、む・・・・・・、」

素直に侍が目を瞑る。なぜだか胸が熱くなった。信頼されていると感じるのは自惚れだろうか。穴の
周りを丁寧に舐めながら、指先のそこをゆっくり撫で続けた。侍の息が激しくなってきた。

「五右ェ門、よくなってきたか?」
「・・・・・・。」

侍が小声で何か口走る。何と言ったか分からなかった。おそるおそる侍の前を覗き込み、次元は息を
飲んだ。

「・・・・・・!」

どんな言葉よりも、雄弁な光景だった。
こいつ、こんなに大きくなるのかと驚くくらい怒張したものから液が垂れて、シーツにまで届く糸を
引いている。その露がローションだけでないのは明らかだった。

      しごくぞ、五右ェ門。」
「な、ら・・・・・・ぬ・・・・・・!」

「な」でもう握っていた。
悶え唸るような、物凄い声が上がる。
二、三度愛撫しただけで、あっという間に侍は果てた。

「・・・・・・。」

どっ、と崩れ落ちる体を後ろから抱き締め、うなじに顔を埋める。仰向けにしようとしたが、五右ェ
門は顔を伏せたまま動こうとしなかった。

「・・・・・・なんだ、恥ずかしいのか。」
「後生だ、次元」と、くぐもった声がする。
「今のは、忘れてくれ。」
「やだね。」
「・・・・・・!」

弾かれたように顔を上げる五右ェ門に、笑って言った。

「あんな声聞いたの俺だけなんだろ。死んでも忘れねえよ。」
「・・・・・・。」

赤い顔で、五右ェ門がまた突っ伏す。

「・・・・・・たわけ者め。」
「否定はしねえ。」
「・・・・・・そんなニヤけた顔で見るな。」
「ったく、無理ばっか言いやがんなお前は。」

ゴロンと仰向けにさせてやる。腹の辺りでくちゃくちゃになっている精液をひと舐めして、次元は顔
をしかめた。

「どうだ、まずかろう。」

見下ろす五右ェ門が笑っている。

「確かに。」

お前よく飲んだなと言いながら、丁寧に舐めとってやった。はぁぁ、と息を吐き、五右ェ門が起き上
がる。手が自然に次元のものへと伸び、撫で始めた。さっきから先走りが溢れてどうしようもなかっ
たそこが、くちゅくちゅと音を立てる。もう入れたい。たまらない。

「五右ェ門・・・・・・、」
「切ない顔をしおって。」

ふ、と五右ェ門は笑った。

「そんなことで、研究とやらが続けられるのか。」
      やってみるさ。」

のしかかり、両脚を抱えて大きく開く。正直余裕は全然ねえがな、と独りごちた。またローションを
指に垂らし、つぷ、と入れる。

「あ・・・・・・?」

違うものが入ると思ったのだろう、五右ェ門が顔を上げる。

「中もよく濡らしとかないとな。」

もう一本入れ、広げるように回してやる。さっきの場所を指二本で刺激すると、侍が声にならない声
を上げた。果てたばかりのくたりとしたものが、目の前でぐ、ぐぐ、と勃起し始める。めちゃくちゃ
興奮する。

      限界だ。」

自分自身にも液を垂らしてから、ゆっくり挿入した。
抵抗の大きい亀頭を納めるのに少し時間がかかったが、ローションのおかげか後は比較的スムーズだ
った。腰ごと押し進めるにつれ、侍がはああああ、と長い息を吐く。
奥の奥まで納めると、ぴったり密着した付け根同士がドクドク脈打っているのが分かった。二人の吐
く荒い息だけが、絡まり渦巻いて部屋に満ちてゆく。

      やべえ、やっぱいい。

動かすこともできず、押し寄せる快感に次元はひたすら耐えた。温かさと圧迫感と、何より目の前の
痴態にイカれそうだ。うっすら頬を染め体を震わせて、侍は白い腿を大きく開きさらけ出している。
その中央、頼りなく震えるむき身の陰茎は、信じられないことにしっかり勃起したたままだった。

「痛くねえのか、五右ェ門。」
「・・・・・・。」

口を開けたまま、侍が黙って頷く。
動かしたかったが無理だった。侍のためではない。今動かすと自分がやばい。
五右ェ門の中が、不意に動いた。

「ちょ五右ェ門、動かすな。」
「・・・・・・ごかして、おらぬ。」

真っ赤な顔でぎゅっと目を瞑り言うくせに、中はひくんひくんとうごめき続ける。

「こら、動くなって!」
「勝手に動くのだ!」
「・・・・・・くそおおおもうダメだ!」

堰を切ったように、次元の腰が動き始めた。ちきしょう、もう少しもつと思ったのに! あそこをこ
すってやろうとかここを突いてやろうとか、色々考えていたのが全部吹っ飛んで、体が馬鹿みたいに
動く。かろうじてさっきの場所のことを思い出した。確か入り口近く、この辺か? 意識してそこを
こすり始めた途端、

「・・・・・・!」

すごい力で腕を掴まれると同時にぎゅううう、と穴が締まり、次元はほとんど悲鳴を上げかけた。し
まった、やり過ぎたか。

「悪ぃ、五右ェ門! 痛かったか?」

慌てて侍を覗き込んだ。うっすらと見つめ返すその目から、ボロボロと涙が零れる。糸引く口を少し
開き、うわごとのように、侍は言った。

「やめ・・・・・・るな・・・・・・!」
「・・・・・・!」

今度こそ本当に、何もかも吹っ飛んだ。
ベッドが動くくらい激しく侍の体を突き上げ、捏ね回し、こすりまくった。ゆさゆさと揺さぶられる
侍はもう声すら出ない様子で、されるがままになっている。ふいに仰け反り、白い喉をあらわにした。
手がシーツを引き掴んだ。多分、もうすぐだ。
ありったけの力を込めて、腰を打ちつけた。
侍の脚が不意に絡み、尻がぐうっと持ち上がる。次の瞬間、腹に熱いものがびしゅ、と掛かった。

「・・・・・・五右ェ門・・・・・・!」
「〜〜〜〜〜!」

まだビクビクとイキながら、侍が腕を伸ばす。背を浮かせてしがみつき、強く抱きしめ「次元」と言
った。
ひとたまりもなかった。
咆哮を上げ、侍の中にぶちまけた。




どっ、と横ざまに五右ェ門は倒れた。信じられないといった表情で、乱れたシーツを眺めている。

「・・・・・・触ってねえのに、イッたのか。」

まだ上下している背を撫で囁くと、侍は「訳が分からん」と呟いた。

「分かんねえってこたねえだろ、こんなになっといて。」

力尽きたものを弄んでやると、放ったばかりの精液がくちゅくちゅと音を立てる。「やめろ、次元」
と侍が身をよじった。

「よかったか。」
「・・・・・・。」

ぽつりと侍が言う。

「・・・・・・世界が、変わった。」
「・・・・・・。」
「お主のせいだ。」

恨むように言う侍の顔が、真っ赤に染まってゆく。なぜだか胸がいっぱいになった。言うべき言葉を
見失い、「そりゃ光栄だ」ととりあえず次元は言った。五右ェ門がぶほ、と吹き出す。

「何か勘違いしておらぬかお主、拙者、別に礼を言った訳では・・・・・・、」

唇を塞がれ、残りの言葉がモガモガとこもる。胸の中に抱きしめると、やっと言葉が見つかった。

      ありがとな。」

やはり訳が分からん、と侍が呟く。
声が、笑っていた。












まさかの続きものの続きです(^−^)。「BLACK PEPPER」のじろたんさんから、「続き物のその後
ストーリーで『研究しているジゲゴエ』とか『初めてトコ○テンして恥ずかしいやらびっくりするや
らのゴエ』とか読みたいです☆」という非常に具体的なリクエストをいただいたので(^−^)、ま
ず「トコ〇テン」の意味を調べるところから始めました。じろたんさん、リクエストありがとうござ
いました!





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