姫始め








何十時間運転し続けたって平気だが、渋滞となると話は別だ。新しい年を照らす日の光は確かに輝かしく感じられたが、こう車の中を
暖められたのでは、眠くなって仕方がない。

「はわ〜ぁあ。」

ハンドルの上に足を投げ出し、次元は反っくり返って大きな伸びをした。姿勢一つ崩さず助手席に座る侍が、こちらを見る。

「疲れたか。」
「まあな。泥棒に正月もイースターもねえと思ったが、渋滞を計算に入れてなかったのは失敗だったぜ。」
「まだ80kmは渋滞らしいが。」

遥か彼方の電光掲示板が、侍には読めるらしい。「うええ」と呻いて次元は突っ伏した。

「運転を代わるか。」
「こう動かないんじゃ、席がどっちだって同じだろ。お前疲れねえのか。」
「鍛えておるからな。」

たいしたもんだ、と呟いた。もう何時間も体を動かしていないせいで、腰と尻が限界に近い。揉んだり叩いたりしていると、不意に侍が
言った。

「・・・・・・少し、休むか。」
「ああ?」

見上げると、侍は少し先にある建物の方へ目を向けている。一目見ただけでその用途が分かるけばけばしさに、次元は目を疑った。

「・・・・・・いいのか、五右ェ門。」
「別に構わぬ。ルパンとの待ち合わせは明日であろう。そう急がずとも・・・・・・、」

言いながら五右ェ門が疑わしげな目を向ける。

「・・・・・・もう一度確認するが、お主は本当に疲れておるのだな。」
「ああ。くたくただ。」

大真面目な顔で、次元は頷いた。



     *



「・・・・・・この、大嘘つきめ!」

組み敷かれた腕の下で、侍がわめき立てる。やたらバカでかいベッドの真ん中で侍の帯を解きながら、次元は真面目な顔で返した。

「嘘は言ってねえ。俺はくたくただぜ。」
「ならばおとなしく寝ておればよかろう!」
「こっちの方が回復が早えんだよ。」

平らな胸を暴き出し、乳首に唇を付けた。

「ん!」

押さえ付けた腕が伸び、シーツに皺を作る。あっという間にぴんと立ったそこを指でいじりながら、ぴろぴろと舐めた。

「ずいぶん反応が早えな。お前も我慢してたのか?」
「た・・・・・・わけ・・・・・・!」

悪態をつく声に、もう荒い息が混じり始めている。首筋に顔を突っ込み、掻き抱いて深く吸い込んだ。

「いい匂い、すんな・・・・・・。」
「・・・・・・。」

離した侍の両手が、不意に次元の背に回される。少し強く抱き締められて、思わず息をこぼした。

「気持ちいいぜ・・・・・・、五右ェ門・・・・・・、」
「次元      、」

たまらないという表情で、侍が唇を寄せてくる。絡まる舌を味わいながら、幸せな気分で次元は目を閉じた。



     *



はっ、と目を覚ました瞬間、自分がどこにいるのか分からなかった。

      起きたか。」

隣の声で全てを思い出し、愕然とする。俺は     

「途中で寝ちまったのか。」
「あっという間だったぞ。」

俯せで頬杖をついた侍が、こちらをチロン、と見下ろす。      なんてこった。

「悪ぃ五右ェ門、つい      、」
「疲れているのに無理をするからだ。」

咎める風でもなくそれだけ言って、侍は起き上がった。一緒に起きようとする次元を押し止める。

「お主は寝ていろ。」
「いや・・・・・・、おま      、」
「いいから。」

むんずと押さえ付け、俯せにした次元の上に侍は馬乗りになった。腰に両手を当て、ぎゅうううう、と押す。

「うおおおぉぉぉう・・・・・・、」
「どうだ、気持ちよかろう。」
「ぉぉぉ・・・・・・。」

もう変な声しか出ない。揉みしだかれ撫でさすられて、次元は骨抜きのような声を上げた。気持ちいい。気持ちよすぎて、ちょっと     
シーツに押し付けられたものが、急激に成長しそうなんだが。
侍に知られたらぶん殴られそうだ。せっかく疲れを取ろうとしてくれている純粋な厚意に悪いような気もして、次元は熱いものを持て余
したまま、心地よい按摩に揺さぶられ続けた。
首の方を揉もうとして、侍が腰を少しずらした時だった。
微かに、それが触れた。

「!」

弾かれたように顔を上げた次元を、「どうした」と侍が咎める。「いや」と呟き、顔を伏せた。五右ェ門     
お前も勃ってんじゃねえか。
今すぐ引き寄せ押し倒したいのを、次元は必死で我慢した。
      これは、チャンスかもしれねえ。
くあぁ、と欠伸をしてみせた。

      眠いか、次元。」
「いや、気持ちよくてな・・・・・・。」

眠いどころか、はっきり言ってギンギンだった。絶対それを悟られないように、眠そうな声で答えてやる。間を置かずにすぅ、と寝息を
立ててみせると、侍が手を離した。

「次元・・・・・・、」

覗き込み「寝たのか・・・・・・?」と囁きかける。そんな切ない声で呼ぶな、頼むから。
顎がおかしくなりそうなくらい強く歯を食いしばり、次元は耐えた。
しばらく次元を見つめていたらしい侍が、やがて息をつき、もそもそと隣に身を横たえた。
しばらくして、衣擦れの音が上がった。袴をどうにかしているのだろう。それから     

くちゅ。

「!」

はっきり聞こえた水音に、次元は跳ね起きそうになった。間違いない、これは     
くちゅ、くちゅくちゅ、という音は次第に激しさを増してゆく。微かな息さえ混じるのを聞いて、次元はとうとう観念した。限界だ。

「じ・・・・・・、げん・・・・・・、」

うわずる声に「なんだ」と返事した。

「!!」

仰天する五右ェ門の右手を掴んだ。たった今まで自身をしごいていた手は、先走りでもうびしょびしょだ。振りほどこうとするのを押さ
え付け、「すまん」と次元はまず詫びた。

「何がすまんだ、お主      !」
「ああ起きてた。さっきからもうこんなにしてな。」

起き上がり、そこを見せつける。スラックスの上からでも分かるくらい隆々と立ち上がったものを、真っ赤な顔で侍が見つめた。

「お前のも見せてくれ、五右ェ門。」
      !」
「頼む。」

開いた侍の口から、「覚えておれ」と物騒な言葉が漏れた。やおら起き上がり膝立ちになって     
思わず次元は顔を抑えた。鼻血が吹き出るかと思ったのだ。
前垂布を片手でつまみ、侍がそろそろとめくり上げる。最初に、はみ出しかけの袋が見えた。それから、はち切れそうな白い布があら
わになる。自身の恥ずかしい恰好を重々承知しているのだろう、血管が切れそうなくらい顔を紅潮させた侍が、「もう、よいか」と小さな
声で問う。

「お前・・・・・・、」
「なんだ。」
「そんな恰好、誰にも見せんなよ。」
「見せるか、馬鹿も      っふ!」

前触れなく触れられ、五右ェ門があられもない喘ぎ声を上げる。軽く握っただけでじゅぶ、と液が溢れた。

「お前、もう抜いちまったのか。」
「・・・・・・て、おらぬ・・・・・・!」

布に唇をつけ、じゅうぅと吸った。

「んんん!」

のけぞる侍が拳を口に当て、声を抑える。なるほど先走りらしい。布越しにじゅうじゅうと吸っては息を送り、こぼれた玉をさすってやっ
た。「次元・・・・・・」と侍が焦がれた目で見下ろす。

「ん?」

どうして欲しいか百も承知で、次元はすっとぼけた。正直言ってこれ以上苛めると命が危ない気もするが、構うもんか。
布を外して生でしゃぶって欲しい、とは到底言えないらしい。布越しの愛撫に五右ェ門は切なげな声を上げ、ただただ視線で必死に訴
える。仕方ねえ、助けてやるか。
突然、次元はうつ伏せに寝転んだ。大きく口を開いてべろんと舌を出し、五右ェ門を見上げる。

「五右ェ門、褌取って、自分でここに入れてみろ。」
「・・・・・・!」

ほとんど殺気すら漂わせ、侍が次元を睨め付ける。あと数時間の命かな、と次元は思った。こんな絶景と引き換えなら、まあ文句は
ねえさ。
俯き身を震わせる五右ェ門が褌をぐいと横にずらすと、待ち兼ねたように充血した一物が飛び出した。口を開ける次元を途方にくれた
ように見やってから、膝でにじり寄り始める。一ミリも動かず、次元は待ち構えた。

「ほら、五右ェ門。」
「・・・・・・。」

そそり立つ自身を手で支え、そろそろと侍が腰を落とす。突き出した次元の舌に、ぴと、と濡れた尖端を押し当てた瞬間、「ん」という声
が漏れた。

      よく、来たな。」

当てられた尖端をちろ、と舐めてから、思い切りしゃぶり上げてやった。

「んふ・・・・・・! ・・・・・・っく・・・・・・!」

じゅぽじゅぽと吸い立ててやると、たまり兼ねて五右ェ門が前に倒れ込んだ。スラックス越しに次元の尻を鷲づかみにする。

「こあ、ごえおん、やえろ。」
「ん・・・・・・、次元・・・・・・、お主のも・・・・・・!」
「そうらな。」

一旦唇を抜き、次元は仰向けになった。

「これで俺のもできるだろ。」
「・・・・・・。」

ゆっくり脚を開きながら、五右ェ門が前かがみになる。伸ばした手が次元のベルトにかかった瞬間、降りてきた袋に次元は吸い付いた。

「! 卑怯だぞ、次元・・・・・・!」
「卑怯じゃねえだろ。お前もがんばれ。」
「くそ・・・・・・、」

カチャカチャとベルトを外す音を聞きながら、次元はゆっくり五右ェ門の陰茎を拭った。

「さわ・・・・・・、るな・・・・・・、」
「触るさ。」

ぬるぬるのそれを手に取り、目の前の尻穴に塗りこめる。びくう、と体が跳ねた後、五右ェ門の手が早まった。危機を感じているらしい。
ようやくジッパーが下ろされたので、腰を上げて協力してやった。スラックスと下着が下ろされた瞬間、ものがびたん、と侍の顔に当た
る。

「わり。」
「・・・・・・。」

無言で侍が口を開ける。やばい。慌てて次元は指をずぶぶ、と挿し入れた。

「待・・・・・・て、次元!」
「待ったぜ、充分。」

んんんん、と唸ったまま侍の動きが止まる。中がもう充血しているのが分かる。お前も待ちきれないんじゃねえか。狭い中を広げなが
らぬこぬこと指を出し入れした。揺れている玉をしゃぶり、前もしごいてやる。

「次元・・・・・・、やめ・・・・・・、もう・・・・・・、」

目の前のものに触ることもできず、侍が腰を揺らし始める。前も後ろも愛されると、侍は大抵あっという間だ。今もあと数秒もつかどう
かというところだった。不意に次元は手を止める。

「・・・・・・?」

朦朧とした顔を、侍がこちらに向けた。

「五右ェ門、どっちか選べ。」

余裕を装い、次元は笑ってみせた。

「このままイクか、それともオレのでイクか?」
「・・・・・・、」

思わぬ早さで五右ェ門は向きを変えた。すぼ、と指が抜けて次元が逆に慌てた声を出す。

「おい、ごえ      、」

ぎゅう、とものを握られ、次元の声が止まった。次の瞬間、

「ぅ・・・・・・、ぉおおお・・・・・・!」

どっちが入れられたのか分からないような声だった。充分広げられた侍の穴が次元をずぶずぶと飲み込んでゆく。納めきるや否や、
五右ェ門は激しく動き始めた。

「待・・・・・・、ご・・・・・・、ちょ・・・・・・!」
「待てぬ。」

ガツガツと腰を振り、五右ェ門が低い咆哮を上げる。やばい。これはやばい。腹に渾身の力を込め、次元は起き上がった。

「!?」

ごろんと倒され、面食らった侍が次元を見上げる。視線を受け止め、「この野郎」と次元は呟いた。

      覚悟しやがれ。」

ふ、と侍は笑ったらしかった。

「拙者の台詞だ。」
      !」

挑発し合った互いの口が、引き寄せられるように重なり合う。もう言葉はなかった。
ベッドが激しく動き始めた。



      *



「ううう・・・・・・。」

素っ裸のままで枕に突っ伏し、次元は情けない声を上げた。シャワールームから出て来た侍がカーテンを少し空け「次元」と言う。

「渋滞は解消したようだぞ、そろそろ・・・・・・、」

ベッドの上を見て侍は言葉を切る。

「お主、まだそんな格好でおるのか。」
「俺はまだ駄目だ、五右ェ門、お前先に行け。」
「まったく・・・・・・、お主は休憩しにここに来たのではないのか。」

正直それは違うが、そうとも言えない。黙っていると、侍が次元の腰に手を当てた。

「ここか。」
「まあ、全体だ。」
「・・・・・・。」

もそもそと侍が次元の上にのし上がる。腰を押されて、次元はつい漏らした。

「またおっ立てんなよ、お前。」
「な!? お主も催しておったではないか!」
「まあ、いいさ。」

腕を取り、どさ、と引き倒した。「何をする」と顔を上げる侍の唇を塞ぐ。

「む・・・・・・、」
「マッサージはやめとこうぜ。どツボにはまる。少し寝りゃ回復するさ。」
「・・・・・・お主が、それでよいなら。」
「ああ。今は眠い。」
「・・・・・・。」

腕を差し伸べてやると、侍は素直に頭を乗せた。「まあ、よいか」と声がする。

「拙者も、少し疲れた・・・・・・。」

くああ、と欠伸を一つしたなり、侍はくう、と寝息を上げた。早えな。苦笑し、次元はもう一度だけキスをする。
心地よいだるさが全身を包み、地球の芯まで吸い込まれそうだ。
一番の回復法だな。

半分夢に落ちながら、愛しい体を引き寄せた。












新年早々、「ヒメハジメを書くように」という某ミューズのエロ啓示が下ったので、東京に帰る新幹線の中で書きました(^−^)。以前にミ
ューズからバトンをいただいて褌をめくるゴエのイラストを描いたので、その短い挿文を書いて日記か拍手にでも上げるつもりだった
のですが、予想外に長くなったので、もう普通の更新にしました。ほとんど時間をかけてないので雑ですが、許してください(^−^)。






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