体の繋がりからの恋もある

                                              漢侍受祭 お題「恋」







 投げ捨てるように身を離し、次元はベッドに腰をかけた。荒い息に肩が上下する。

「・・・・・・悪かった。」

 ぼそりと吐き出される詫びの言葉を、五右ェ門は仰向けのまま、黙って聞いた。
 シュボ、と音がして、部屋の半分が明るく照らし出される。流れてきた煙を深く吸い込み、目を閉じた。
まだ激しく鳴る鼓動と共に、下腹の痛みがじんじんと響き続ける。

「・・・・・・なぜ、拙者を抱いた。」

 ひどくガサついた声が出た。

「・・・・・・分からねえ。」

 背を向けたままうなだれる姿は、先刻の獣じみた男とは別人のようだ。

「溜まっていたのか。」
「なめんな。女に不自由はしてねえよ。」
「では、何故だ。」

 ベッドを弾ませ、次元は立ち上がった。

「じゃあ聞くがな、おまえはなんで拒まなかった。」
「・・・・・・。」

 天井を見つめたまま、「成程、」と笑った。

「・・・・・・確かに、分からんな。」
「だろ。」

 沈黙が流れる。
 深い溜め息をついて、次元が衣類を拾い始めた。突然始まり、昂ぶって、互いの服を乱暴に脱がせ合
った時間が遠い昔のことのようだ。

「・・・・・・忘れようぜ、お互い。」

 下着を拾い上げ、次元が呟く。

「悔やんでいるのか。」
「当たり前だろ。」
「・・・・・・そうか。」

 痺れたような下腹に力を入れ、次元の方へ寝返りを打った。まだうまく動かない体を横たえたまま、男
を見上げる。

「・・・・・・何だよ。」

 次元がぶっきらぼうに問う。こちらを見ないようにしてスラックスに片脚を突っ込み、軽くよろめいた。

「後悔してねえのか、おまえは。」
「分からぬ。だが・・・・・・、何だろうな、これは。」

 身を切られるようだ、と呟いた。

「・・・・・・忘れてしまうのだな、お主は。」
「・・・・・・。」

 次元が、ゆっくりこちらを向いた。
 肩越しに送られる視線を、寝そべったまま見つめ返す。
 男の手にしたシャツが、ぼそ、と落ちた。

「・・・・・・五右ェ門。」
「なんだ。」
「・・・・・・触ってもいいか。」
「やめておけ。また後悔するぞ。」
「かもな。」

 吸い寄せられるように近づき、侍の髪に手を伸ばす。無骨に頭を撫でてから、五右ェ門の手に、熱い唇
をそっと押し当てた。

「随分優しいのだな。先程と違って。」
「・・・・・・。」

 こええんだよ、と聞こえた。
 聞き返そうとした唇は突然塞がれ、機能を失った。

 煙草の味に、少しだけむせた。












「Secret Place」の紫あざみさんの祭投稿作品「体の繋がりからの恋もある」に、挿文させていただきました。
イラストを見たその日、強烈な印象を振り切れないまま電車の中で悶々と反芻していたら、すごい勢いで
妄想が広がり始め、慌てて携帯に打ち込んだのを覚えています(^−^)
紫あざみさん、挿文許可をありがとうございました!






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