■月子さまよりいただきもの
ハッピー☆ウェディング
俺、次元大介はこの度結婚することになった。
相手は仲間兼恋人の石川五右エ門。
男同士で結婚とかありえねぇ。というか、考えたことはなかったはずが、結婚することになった。
ルパンとの賭けに負けての公開プロポーズ。
公衆の面前でやった。TVの前でやった。どんな羞恥プレイだ。
五右エ門が呆れるなり笑い飛ばすなりすればただの冗談になったのだろうに、あいつ承諾しやがった。
意味わかんねぇ、ほんと俺の予想の斜め上をいきやがる。
とはいえ。
戸惑いは隠せないが、嬉しくないといえば嘘になる。
まあ、正直にぶっちゃければ嬉しい。それもかなり。
「とっつぁんは呼ぼうぜ。五右エ門は誰を呼びたい?」
「自然先生は絶対でござる」
「百地はどうする?」
「世話にはなったが・・・拙者を陥れて殺そうとした御仁だからなぁ」
男同士だし、泥棒家業だし、大げさには出来ないが身内だけ呼んでこじんまりしたパーティーをすることになったらしい。
ルパンがノリノリで五右エ門を口説き落としていた。
俺にも聞けってーの。
ピンポーン。
チャイムが鳴って、五右エ門が宅配便を受け取ってきた。
箱をあけると踵が高い真っ白な女物の靴。
「なんだこりゃ」
「ドレス用の靴でござる。ちゃんとしたサイズで注文したのに小さい」
俺の問いかけに答えながら五右エ門は靴に足を突っ込み、眉を顰める。
「大丈夫よ、シューズフィッターがあるわ」
不二子がどこからか道具を取り出し、靴の中に差し込んだ。
「こうやってネジを回して・・・少しずつサイズを大きくするの」
「なるほど、便利な道具でござるな」
五右エ門が嬉々として器具のネジを回す。
ぶちっ。
力を入れすぎたのか、靴の甲部分に亀裂が走った。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「足元はドレスで隠れるから大丈夫だよ、五右エ門ちゃん!」
ルパンが優しく笑いかけ、硬直した五右エ門を慰めた。
ピンポーン。
チャイムが鳴って、五右エ門が宅配便を受け取ってきた。
箱をあけると真っ白な女物の下着。
「なんだこりゃ」
「ドレスの下に着るブライダルインナーでござる。ちゃんとしたサイズで注文したのに小さい」
いつの間にか着物を脱ぎ、下着を身につけようとした五右エ門が、眉を顰める。
背中部分に沢山のホックがついているのだが、それが留められないというレベルじゃない。
生地の端同士が10センチくらい離れてしまっている。
「次元、留めてくれ」
背中を向けた五右エ門に近づき、ギュッギュと布地を引く。
伸縮性があるのか、無理矢理感はあったが無事すべてのホックが留まり、下着は無事五右エ門の体に装着された。
「胸が余る」
胸元を触りながら、五右エ門が言う。
そりゃそうだろう。いくらペタンコな女だって男の五右エ門に比べれば少しは隆起しているもんだ。
「大丈夫よ、こうやってね、肩や背中のお肉を胸に回すの。矯正下着を着るときの常識よ」
矯正下着と聞いてルパンが微妙な顔をしながら見ていることに気がつかず、
不二子は五右エ門を前かがみにさせ、背中や肩の肉をギュッギュと前に流す。
だが、鍛えられた侍の体に流すほどの贅肉はなかった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「詰め物すればわかんねえよ、五右エ門ちゃん!」
ルパンが労わる口調で、無言になった不二子と五右エ門に笑いかけた。
ピンポーン。
チャイムが鳴って、五右エ門が宅配便を受け取ってきた。
箱をあけると真っ白なウェディングドレス。
「なかなかいいじゃないの、綺麗!」
「いんたーねっとで中国の店に注文した3万円の品でござる」
「安すぎねぇ?」
「どうせ一度しか着ないし、このくらいでよいのだ」
五右エ門はご満悦だが・・・お前が注文したのか、それもインターネットで!
突っ込みたいが、不二子に躾けられ今ではアイフォーンを使いこなす侍だ。
元々教えれば車でもクルーザーでもセスナでも操縦できるんだから、携帯くらい本気だせば簡単だろう。
とは思うが、やっぱり違和感は否めない。
「今度は少し大きい」
ブライダルインナーで締め付けた体にこのドレスは少し大きいようだ。
「あら、困ったわねぇ」
「問題ない。縫い物は得意だ」
侍自ら補正するらしい。
どこからどこまでも器用なやつだ。
「どうせ一度しか着ぬし。あ、あとは変装用衣装として使えるか!」
良いことを思いついたように嬉しそうに言うけれど。
え?普通なら一生の記念になるウェディングドレスが、式の後は変装用になるのか?
漢らしいといえば漢らしいが・・・俺的には少々複雑だぞ、五右エ門。
ピンポーン。
チャイムが鳴って、五右エ門が宅配便を受け取ってきた。
箱をあけると真っ白なレースの塊。
「なんだこりゃ」
「ベールでござる。ドレスに合わせて注文したのだ」
ドレスを着込んだ五右エ門は、カーテンのように長いそれを持ち上げ頭に載せた。
なかなか似合っている。
ドレスにも五右エ門にも。
「ちょっと長いんじゃねぇ?」
「そうね、引き摺りそうよ?」
「問題ない。斬るのは得意だ」
斬鉄剣が瞬き、ベールはちょうどいい長さになった。
切り口も綺麗で途中でちょんぎったように見えない。器用なもんだ。
ウェディングドレス姿の五右エ門を見て、俺は感動していた。
確かにベッドの中では五右エ門は受身というか、まあぶっちゃけいえば女役だ。
だが、性格的に漢らしく、頑ななところがあるやつだから、ドレスを着ることを拒むと思っていた。
それなのに。
自分で調べて、自分で注文して、女物のそれらを全て身につけている。
俺と結婚するために。
俺と結婚するために!!!
感動と幸福感でうっとりしていた俺の前に、いつの間にか紋付袴に着替えた五右エ門が立っている。
あれ?ドレスは?
「早く着替えろ、次元。招待客はもう来ているぞ」
五右エ門の肩越しに、ワイワイと招待客で賑わった披露宴会場がみえる。
「あ、悪りぃ」
俺の着るものは、と周りを見渡すとズイッとドレス一式が差し出された。
「・・・は?」
「早く着ろ」
「ド、ドドドドレスじゃねぇか!!」
なんでだ、五右エ門、お前が着るんじゃなかったのか!?
「おぬしのために用意したのでござる。着ないとは言わぬだろうな?」
ドレスを持った五右エ門がジリジリと迫ってくる。
その後ろにはブライダルインナーを持ったルパンと、靴とベールを携えた不二子。
「次元、覚悟しろ!!」
「バカ野郎、そんなん俺に似合うか!!」
ガバっと3人に襲い掛かられ、あっという間に身包み剥ぎ取られ。
「ギャーーー!!ヤメローーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
自分の叫び声で目が覚めた。
ゆ、夢でよかった!!
冷や汗流しながらも、動悸激しい心臓を落ち着かせようと胸に手を当てた俺はビクっと身を震わせた。
この手触り。
今、俺が着ているのは・・・なんだ?!?!
恥ずかしながらわたくしは2012年1月15日に入籍したのですが、なんと月子さんがお祝いジゲゴエを書いてくださいました(^−^)!
す、すごい! ジゲゴエ結婚式だー! ジゲゴエ好きの夢の涯ではないですか(^−^)!
しかしちょっと待て、なんかこの話、身に覚えがあるような・・・!!!
なんと月子さんは私から聞いたあれあこれやをジゲゴエ変換して、実話と妄想の入り混じった話を書いてくださったのです。
すげえなんだそのスキル(^−^)! すげえけど、なんか恥ずかしくてまともに読めない(^−^)! きゃーきゃー(右往左往)
あほですみません。しかし世の中に2つとないオリジナルジゲゴエを私のために書いていただいた嬉しさを、察していただけ
ますと幸いです。具体的にどの辺が実話なのかは聞かないでください(^−^)。
ほんとに私は三国一の幸せ者です! 月子さん、ありがとうございました!
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