2人








 月明かりが窓際をぼんやりと照らす。
 脱ぎ捨てられた衣類が点々と散らばるその奥は暗闇だった。ちゅ、ちゅ、という秘めやかな音だけが響
いている。

「ごと・・・・・・さ・・・・・・、」

 きれぎれにしのぶが訴える。体ごとのしかかり、舌先で乳首をころころと転がしながら後藤が「ん?」と
囁いた。

「手・・・・・・、離して・・・・・・。」
「どうして?」

 硬く尖った部分を吸いながら口の中で舐め回す。「ああっ!?」と身をよじるしのぶの両手首は掴んだまま
だ。

「だって・・・・・・、いつも・・・・・・動けなくして・・・・・・ん、ふっ、・・・・・・」
「それがいいんじゃない。」
「いやよ・・・・・・。」

 さんざん嬲った乳房から後藤が顔を上げる。紅潮した頬にキスしてからそっと抱き起こし、やっと片方
の手首を解放した。
 そのまま握った方の手を、熱く脈打つ自らのものへと導く。

「・・・・・・!」
「・・・・・・触って?」

 スウェットの上からでもはっきりと隆起しているのが分かるそこを、しのぶはまじまじと見つめた。後藤を
ちらっと見やってから、そっと撫でてみる。

     熱い・・・・・・!

 張り詰めて固い感触を確かめるように、しのぶは半ば無心でそれを撫でさすった。

「う・・・・・・お・・・・・・、」

 後藤の声で我に返り、思わず顔を上げる。後藤の目がたまらなさそうにしのぶを見つめていた。

     後藤さん、感じてる・・・・・・。

 しのぶの中で、何かがとくんと音を立てた。黙ってスウェットを引き下ろそうとする。

「しのぶ・・・・・・さん?」

 後藤が驚き、しのぶを窺いながら腰を上げた。
 下着を持ち上げ、そろそろと下ろす。待ち切れないようにぴこん、と飛び出したそれを指でつつ、となぞ
った。「う」という声を聞きながら長い髪を耳にかき上げる。

「しのぶさ・・・・・・、それは・・・・・・、」
「いいの。」

 押しとどめようとする後藤を制して、しのぶはそっと先っぽを口に含んだ。ちろちろと舌先で舐めてみる。
 後藤の息が急に荒くなった。
 どんな顔をしているのか見たくて、しのぶは口に含んだまま視線を上げる。食い入るようにこちらを見つ
めている後藤と目が合った。
 しのぶの様子を見てさらに興奮したのが分かる。しのぶは目を伏せて、根本まで唇を滑り下ろした。

「うお・・・・・・!」

 後藤がじっと見ている。視線を感じて昂ぶるままに、口の中でめちゃくちゃに舐め回した。

「しのぶさ・・・・・・!」

 うわずる後藤の声を機に、吸い立てながら頭を上下させ始める。口の中のものがどくんどくんと脈打っ
ている。
 ふいに後藤がしのぶの腰をつかんだ。

「・・・・・・!?」

 否応なしに下半身を引き寄せられ、一旦唇を離す。横になった後藤の顔をまたぐ恰好になって、後藤
の意図がやっと分かった。

「後藤さん! いやよ・・・・・・!」
「・・・・・・俺だけじゃ申し訳ないもの。」

 熱っぽい声で囁きながらしのぶの下着をくい、と横へずらす。抵抗するしのぶの腰をもう片方の腕がが
っちりと押さえて離さない。

「わあ・・・・・・、すご・・・・・・、」
「お願い後藤さん・・・・・・、ああっ!!」

 ざらざらの舌が一番敏感な場所をつついたかと思うと、もの凄い音をたててしゃぶり始めた。今まで知
らなかった感覚がしのぶを襲う。両腕でがっちりと押さえられた腰は浮かすことすらできず、しのぶは手
の甲を口にあてて耐えた。

「ん、んんん・・・・・!」
「しのぶさん・・・・・・、俺のも・・・・・、」

 ぴちゃぴちゃという音の間から後藤がせがむ。何かから逃れるように、しのぶは目の前のものを吸った。

「うわ・・・・・・! しのぶさ・・・・・・、すご・・・・・・、」

 後藤の腰ががくがくと動く。お互い無言で貧り合った。気持ちいいのが自分のものなのか目の前のもの
なのか、もうよく分からない。
 ふいに後藤の顔が離れた。しのぶの腰をそっとどかして起き上がる。

「・・・・・・ちょっと待ってね?」

 まだどこかさまよっているようなしのぶの顔にキスしながら、後藤の手がせわしなく動いた。手早くすま
せてまた横になる。

「・・・・・・?」
「乗って・・・・・・。」

 ええ? と躊躇するしのぶの顎を後藤は優しく撫でた。

「お願い、しのぶさん・・・。」

     こんな切ない声・・・・・・。

 しのぶも後藤の頬に手を伸ばす。そっと跨がると、後藤の両手が乳房に伸びてきた。お互いの顔から
目を離さず、ゆっくりそこを密着させてそのまま沈みこむ。

「んああ・・・・・・、」

 しのぶの甘い声を契機に、後藤が激しく動き始める。突き上げられるたびにしのぶの口から何かが漏
れた。

「ご・・・・・・さ・・・・・・、好き・・・・・・!」
「しのぶ・・・・・・さん・・・・・・!」

 最後に後藤が高く腰を上げた。後藤の腕をつかんだ手にぎゅっと力を込め、しのぶが声にならない声を
上げて崩れ落ちる。

 一瞬の静寂。

 激しい息づかいだけが部屋に響いた。まるで殺し合いの後みたいだ、と後藤は思いながらしのぶを引き
寄せる。しのぶの目も、何か言いたそうに後藤を見つめていた。

「ん?」
「・・・・・・後藤さん、なんだかかわいかったわ。」

 ぶほ、と後藤はむせた。

「あそーお? 40過ぎてんだけどなあ、おれ。」
「いくつだって関係ないわよ。」

     かなわないね、まったく。

「しのぶさんも相当かわいかったですよ。」

 年に関係なく、とつけ加えた途端、ごち、とおでこをぶつけられた。

「いつか寝首かかれるわよ。」
「・・・・・・本望だねえ。待ってるよ。」

 深い口づけの後、2人は、すとんと落ちるような眠りに入る。
 月の光だけが、変わらず部屋を照らして。






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